国際一村一品交流協会

平松 守彦先生 追悼の言葉

「平松先生、貴重なお話しを有り難うございました。僕たちで僕らが求めるものを必ずつかみ取ります。先生もどうか、いつまでもお元気で」と直立して謝辞を述べる海外研修生。
「そうだ、日本の農村女性や若者が実践できたのだから、君たちも、きっとできる !」と固く握手をする平松先生の手にぐうーと力がこもる。
研修生の顔が一段と輝き、平松先生の顔も実に晴れやかにほころぶ。
そんな研修風景がつい昨日のように。

 

 例年になく暑い日が続き、今日も一雨欲しいと木々がざわめく暮れ方、平松先生は92歳の天寿を まっと うし、夜空の星となった。


 大変な努力家で「仕事と人」が大好きなかたでした。年中無休の生涯無休。90歳近くまで、きちんとネクタイを締め 矍鑠かくしゃくりんとした姿がいつも仕事場にあった。
 多才で個性的な人でもあった。生まれつき才能に恵まれた方もいるだろうが、先生を見ていると、才能は育てることだということがよくわかる。とにかくいろいろなことに関心を持ち、子供のようにキラキラした目が踊る。食べ物と同様好き嫌いがなかった。   
 文を書いても、書を書いても、歌を歌っても継続する鍛錬が才能を伸ばし、人品がにじんだ味のあるうまさとなっていた。句集まで出したのには、実に驚いた。

 

 1979年、先生は「一村一品運動」を提唱した。情熱を傾けた数多くの取り組みの中で、これが唯一のライフワークとなりました。
「一村一品運動」は、「誰でも どこでも 今できることをやろう」という農村・農民の自立を目的とする運動です。
「伝統的な加工技術」に磨きをかけた農産品づくりや地域の資源・特性を活かして、「郷土の顔となり誇りとなる そして世界に通用するものをつくろう」という実践活動。
運動の先頭に立つ平松先生は 常に彼らの傍らにいて、苦楽を共に分かち合う
  【この一体感・信頼感】こそが、彼らを突き動かした。
 地域農村女性・若者たちが、これまでの農業だけの単調で過酷な労働・暮らしから、その農業を大切に守りながら、「もっと自由でもっとおもしろいそしてもっと豊かな生活」を求めて、外の広い「産業の世界へ」と、勇躍飛び出していったのです。

 

 平松先生は、行政が企画する「プロジェクト」の中に、人の顔、地域の風景が自然と脳裏にイメージできなければ、なかなか首を縦に振らない。
 特に、日本の地域ならではの「風土・精神・文化・歴史などの価値観」を大切にした。そこには、より「日本的発想」であればあるほど、世界に通用するという独特の感性があり、強い信念があった。
 「人間性・人間の持ち味」の価値観を妙に いじることなく、ありのままに活かしたのが「一村一品運動」。そしてそれこそが、この運動の「オリジナリティ」なのです。
 この運動が、世界の国々の「政治体制・宗教・民族・文化」等に、影響されることなく、むしろ進んで受け入れようとしたのは、この何物にも代えがたい「人間味」に立脚していたことに他なりません。

 

 平松先生は、ライフワークとして40年間、 只管ひたすらこの活動に「無償の愛と情熱」を傾注してきました。
 しかし、今、ご逝去の悲しみに浸り、ご遺徳を しのんで、ぼーぜんと立ちつくすわけにはまいりません。
 日本でも世界でも歴史的には、農村が 困窮こんきゅう疲弊ひへいあえいでいた時、地域特産品の奨励を起爆剤に産業の振興や倹約などにより復興を図った、時の為政者の偉業が伝わっています。
 しかし、反対に名もなき農村・農民主導による自発的な「村おこし」の芽を大切に育て、「一村一品運動」として、時の行政のトップが正面からしっかり支え、大きな実績を残した事例は見当たりません。
 日本で産まれた「自立・自助」に 立脚 りっきゃく するこの運動は、貧困をはじめとする格差がより深刻化する世界の国々にとって、今ほど強く求められているときはありません。
 私どもはこの大分で40年「自律自助」の精神で「行動はしっかり地域に根ざし、思考は世界を見据えよう!」という「一村一品運動の理念」と実践を通じて多くのことを学びました。
 その実践で獲得した貴重な「経験やノウハウ」を惜しむことなく、彼らに直接に伝えることが、金品の支援にもまして、「命の水」になると信じています。

彼らが望んでいることを彼ら自身が実践して、掴み取っていくことが
最も大切なことであると強く確信しています。

 

今こそ,この日本が誇る「一村一品運動の旗」をさらに 高だかと掲げ
「平松先生のご遺志」を世界にまた後世に、引き継いで行かねばなりません。
これからは 是非、皆さんと共にこの運動を支えていこうではありませんか。


 最後に、平松先生へ謹んで哀悼の誠をささげ、多大なご功績に深く感謝申し上げ 在りし日の先生のお姿を しの びつつ 心からご 冥福 めいふく をお祈りいたします。
どうぞ安らかにお眠りください。さようなら。
2016.8.21
国際一村一品交流協会  理事長 内田 正

 

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